肝臓病になった犬猫のためのペット救急箱

ペットを肝臓病から守りたい!肝臓と上手につき合っていくための百科事典

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肝臓がん

ここでは、犬や猫の肝臓がんについて、原因と症状について説明しています。

肝臓がんの種類

一言に肝臓がんといっても、発生した箇所によって大きく2つに分けられます。

原発性の肝臓がん

歳を取ったペットに見られやすいのが、肝臓内でがんが発生する原発性の肝臓がんです。

肝細胞がん

原発性がんの中で最も発症数が多いのが、幹細胞がんです。転移しにくいがんなので、体から肝細胞がんを取り出せば病後の状態は良くなるケースがほとんど。数少ない、完治を望める病気です。

肝内胆管がん

2番目に多い肝臓がんです。胆管に発生して、周囲にじわじわ進行していきます。

血管肉腫

血管の細胞の一部ががん化した状態。全身に起こる可能性のあるがんで、肝臓内にも発生することがあります

転移性の肝臓がん

肝臓以外で発生したがんが転移した場合は「転移性」となります。血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫や大腸・胃がんなど、原因となるがんの種類はさまざま。

がんの転移は、ある程度進行してから始まるものではありません。発声初期から転移する力を持っているため、出来る限り早い段階で発見して治療を行う必要があります。

肝臓がんの症状

犬や猫の体重の2~3%ほどを占める肝臓は、解毒や栄養素の消化・吸収などさまざまな役割を担う重要な臓器です。

特に解毒の働きは、健康を保つために大切な役割。有害物質が体内に入ったり発生したりすると、無害なものへと分解してくれます。例えば体内にできたアンモニアは神経障害に影響を及ぼす有害物質ですが、肝臓で無害な尿素へ変えてから尿として体の外で排出することが可能です。

肝臓がんになると毒素を無害化する力を失い、ダメージに打ち勝つ力を失ってしまいます。犬や猫が肝臓がんになった時、解毒がうまくできないことで倦怠感を覚え、元気や食欲がない状態が続きます。

また肝内胆管がんの場合は目や皮膚がやや黄色くなる「黄疸」の症状が見られることも。しかし黄疸はすぐに消えるか気付けないほど薄い色なので、黄疸だけで肝臓がんを判断するのは難しいでしょう。しかし血液検査を行えば、肝臓がんに気付ける可能性が高くなります。

末期症状まで進行してしまうと、肝臓の機能はますます低下。食事を一切口にできない程に食欲不振が続いたり、お腹に水がたまったりとさまざまな怖い症状が見られるように。吐血や強い痛みによって苦しむペットの姿と直面しなければなりません。また肝性脳症の症状が出ると、性格が激変。症状が進むと昏睡状態にいたることもあります。

これらの症状は肝臓がん特有の症状というわけではなく、手を打ちやすい初期段階で気付くのは困難です。日ごろからペットの健康に気を配ってがんのリスクを最小限におさえることが、愛する家族と長く過ごすための最善の策でしょう。

肝臓がんを見つけるには

毎日ペットと時間を過ごすことも異変に気付くため欠かせませんが、症状がわかりにくい初期の肝臓がんのサインをキャッチするのは難しいもの。ここでは肝臓がんを早期に発見するための診察方法をご紹介します。

触診/問診

経験豊富な獣医師であれば、ペットの体を触っただけでも多くの情報を得られます。また問診で日頃の状態を獣医師に伝えるのも、初期の肝臓がんかどうか判断するために重要です。

目や肌の色で変わったことがあれば、今は元に戻っていたとしても、念のために獣医師へ伝えてください。

また肝機能が低下するとだるさや食欲の低下を引き起こしやすいので、元気があるか、エサを食べているかどうかも重要です。そのほか便の色や形、味覚・性格の変化など、気になることがあれば「関係ないかも?」と思わず、全て話しましょう。

血液検査

動物病院で行っている血液検査では、主に以下の項目をチェックします。

GPT(=ALT)

本来は肝臓で多く発見する酵素なので、血液中の数値が高くなれば肝臓がダメージを受けている可能性が考えられます。

ALP

腫瘍によって胆管の通り道が塞がれた時や押しつぶされた時に胆汁が悪くなると、数値が上昇します。

T-BIL(総ビリルビン)

ALPと同じように、胆汁の流れが悪い場合に上昇。黄疸の原因物質・ビリルビンの数値がわかります。

TP(総蛋白)

血液中のたんぱく質を示す値で、低い場合には肝臓の機能が低下していると考えられます。

ALB(アルブミン)

TPを2/3を占めるたんぱく質で、TPと同様に低いと問題があります。

BUN(尿素窒素)

腎臓病とは違い、肝機能の正常かどうかを見る場合は低くないかを確認します。

エコー検査

肝臓は多くの細胞が集まった臓器。体内の様子をリアルタイムに確認するためには超音波を利用します。

撮影した画像をもとに、獣医師が肝臓に腫れがないか、きれいな状態かどうか確認。腫瘍の有無が判断できるだけでなむ、色の差によって主要の大きさや位置までわかる検査です。

レントゲン検査

ほとんどの動物病院で行っている画像診断法が、レントゲン検査です。肝臓のサイズや形を確認できます。リアルタイムで肝臓の状態を見ることはできませんが、エコー検査と比較して広範囲の撮影が可能です。

CTスキャン

レントゲン写真を一度に数百~数千単位で撮影して、細かくコンピュータ解析を行う検査。高額な費用がかかるうえに全身麻酔でペットの大きな負担がかかるので、必ず必要な検査というわけではありません。

針生検(ニードル・バイオプシー)

肝臓がんだと思われる腫瘍が見つかった時に、悪性か良性か判断するために行う検査です。肝臓に針を刺して肝臓組織を抜き取った後、検査会社に分析を依頼。肝臓に針を刺すため負担が大きいため定期健診でうけるようなものではなく、腫瘍を判断する時にしか行わない検査です。

肝臓がんの治療法

ここでは、犬や猫の肝臓病を治療する方法について紹介します。完治はできない病気なので、症状を一時的におさえる治療がほとんど。またリスクも大きく、治療を行ったからといって必ず結果が良好になるとも限りません。各治療のメリットや考えられるリスクを確認しておきましょう。

外科手術

がん細胞を減らせる可能性が高いものの、体にメスを入れるため負担が大きい治療法です。

がん細胞が肝臓の端にある場合は切除範囲を小さく抑えることも可能。また再発を防ぐためにあえて大きく切除する場合もあります。

ただし肝臓を切除しすぎると生命活動に影響を及ぼす可能性が。ペットの状態や将来的なことを考えながら、少しでも一緒に過ごせる時間を伸ばすためにあえて取り残すという選択をする場合もあります。

抗がん剤治療

薬で肝臓がんと闘うのが抗がん剤治療。麻酔やメスを入れる必要がなく、通院だけでがんを収縮させることが可能です。しかしあくまでも一時的な効果にしか過ぎず、がん細胞はやがて活動を再開。また再発した時には同じ抗がん剤だと効かなくなります。

また抗がん剤治療で最も心配なのは、副作用。正常な組織にとって毒になる薬なので、ほぼ確実に副作用が生じると考えたほうがいいでしょう。場合によっては肝機能がより下がってしまうことも考えられます。

放射線治療

一般的な動物病院では受けることができず、大学付属の限られた施設でしか行えない治療です。放射線をあてる治療なのでお腹をメスで開く必要はなく、外科手術と比べるとペットの体への負担を抑えられます。しかし全身麻酔が必要です。

本来なら数十回にわけて照射すべきものですが、犬や猫には数回に留めるため不十分な治療になることも。放射線を浴びせるため、放射線障害の心配もあるでしょう。

より良い肝臓がんの治療を受けるために

犬の肝臓がんを治療する方法は、ほとんどの場合、がんを除去する外科手術が選択されます。

犬の場合、人間の肝臓がんと比べると程度が軽いことが多く、進行する前に除去さえしてしまえば命を脅かされることはありません。手術で患部を除去するとともに、ワクチンや投薬でがんに対する耐性を高めれば、再発リスクも抑えられます。

しかしどの治療も、何らかの負担をペットに強いるもの。小型犬や老犬、猫などは体の大きさや体力から負担はより大きなものになります。治療の負担を抑えるのに有効なのは、がん細胞を早期発見すること。大切な家族と長く幸せに過ごせるように、定期健診を受けてください。